れをるの歌詞の中でも、「mede:mede」には等身大の姿が率直に映し出されているように感じる。

期限の迫った定期券、携帯電話、埋まっていくアルバイトのシフト。歌の中にあるのは、夢だけを見てはいられない毎日の暮らしだ。

『極彩色』の8曲目に収録されたこの曲は、れをるが作詞・作曲を、ギガがトラックを担当している。(公式作品情報)

手応えと、先の見えない暮らし

歌詞の中では、聴いていたアーティストが、翌日のライヴを最後に解散してしまう。そのすぐそばに、自分のアルバイトの予定がある。

「音じゃお腹はふくらまないから」。

音楽を好きでいることと、それで生きていくことの間にある厳しさが、そのまま出ている。(歌詞)

後年のインタビューで、Reolは22歳まで学生だったと振り返っている。学業と音楽を両立することが自分の支えであり、学生でなくなったときには、自分の半分がなくなったように感じたという。(インタビュー)

その話を踏まえると、この曲の迷いには、学生としての日々の先に、どんな生活を選ぶのかという不安も重なって聞こえる。

当時のれをるは、すでにインターネットで歌声を届け、前年のコミックマーケットでは『No title』を発表していた。自分たちの音楽が誰かに届く手応えも、きっとあったのだと思う。

ただ、ネットで評価されることと、音楽で生きていけることは、同じではない。ネット発の活動からメジャーへ進む道が、今ほど身近ではなかった頃だ。その先にどんな生活が待っているのか、見通すのは難しかっただろう。

好きなだけでは続けられない。でも、好きなものが誰かに届く喜びも、もう知っている。だからこそ、簡単には諦められない。

聴いていたアーティストの解散も、そんな自分の未来と無関係には思えなくなる。このまま続けていいのか。どこかで区切りをつけるべきなのか。答えが出ないうちに、次の予定が来てしまう。

「mede:mede」には、その途中にいる人の生活がある。

はっきりした言葉と、曖昧な意識

歌詞がこれほど生活に近い一方で、ところどころ発音を濁したり、言葉をはっきり言い切らなかったりするように聞こえる。その曖昧さが、歌詞の生々しさをほどよく和らげている。

一語ずつ強く訴えるというより、頭の中を巡っていた考えが、そのまま口からこぼれてくるようだ。眠さの残る朝にも、忙しく過ごす一日の途中にも、考えはまとまらないまま続いている。

しかも、そこで見えてくる自分は、夢に向かってひたむきなだけの人間ではない。自分のことで手いっぱいになり、誰かの痛みにまで気を配れなくなる。傷つきたくないのに、誰かを傷つけてもいる。

そんな自分への嫌気も、歌詞は隠さない。大人になっていくことが、忙しさに慣れ、薄情になることのようにも見えてしまう。

自分の嫌なところまでわかっている。それでも、すぐに変われるほど余裕はない。夢の行方だけでなく、どう生きたいのかという問いまで、曖昧な意識の中をぐるぐる回っている。

1LDKよりも、1K

音楽と生活の切り離せなさには、後年の「1LDK」と通じるものを感じる。

「1LDK」にも、暮らしの厳しさや自分への苛立ちがあり、その中で音楽に心を動かされる瞬間がある。音楽があれば何もかも解決するわけではない。それでも、音楽によって日々の見え方が変わることはある。(「1LDK」歌詞)

ただ、少し冗談めかして言うなら、「mede:mede」に似合うのは1LDKよりも1Kだと思う。

もちろん、実際にどんな部屋に住んでいたかという話ではない。寝起きするのも、音楽を作るのも、暮らしの先行きを考えるのも、一つの部屋。生活の心配をいったん置いて音楽に向き合おうとしても、すぐそばに明日の予定がある。「mede:mede」には、そんな距離の近さを感じる。

夢を追う自分と、日々を回す自分を分けておけない。音楽を続けるかどうかを考えることが、そのまま、これからどう暮らすのかを考えることになる。

一方、寝室とは別に過ごす場所のある1LDKには、少し距離を取れる余地がある。曲同士の関係に重ねるなら、後年の「1LDK」は、音楽に救われる自分も、音楽を疎ましく思う自分も、少し引いたところから見つめているように聞こえる。

洋室寝る作る考えるK玄関

1K

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1LDK

部屋が一つ増えても、音楽と生きる難しさはなくならない。それでも、その難しさを抱えて過ごすための余白は、少し生まれたのかもしれない。

そう考えると、「mede:mede」で繰り返される、自分を愛でるという言葉も身近に感じられる。まだ距離を取れずにいる自分が、今日を過ごすための言葉なのだと思う。

うまくできない自分を責め続けていたら、毎日は持たない。情けないところも、薄情なところも見えてしまうからこそ、そんな自分をいたわる必要がある。

夢に終止符を打つべきか、答えはまだ出ない。それでも生活は続いていく。

「mede:mede」には、その毎日をどうにか生きながら、まだ好きなものを諦められずにいる人の体温がある。